前回までの記事の続きです。
ろう学校の生徒たちに社会性を身に着けさせるため、脇中起余子は次のような寸劇を見せたり、マンガを読ませたりして、討論させるそうです。
1、1対1の会話と授業の違い
2、音楽の時間
3、指示待ち
脇中案「部長から早くこの書類を作るように言われていますが、私も手伝った方がいいですか?」と声をかける。
4、マナーや言葉遣い
脇中案「(たとえ相手のミスと確信していても)私の思い違いかもしれませんが」とやわらかい言い方をする。
5、福祉
「福祉制度はあって当たり前」「お金はどこかから湧き出てくるもの」と思っているように見受けられる聴覚障害者がときどきいるようです(余談ですが、お金はいくらでも使えるものと考えているとしか思えない医者の子どもに、私はときどきどころか、よく会います)。
教室に補聴器用の新しい電池が落ちているのを見つけた教師が「これは誰の電池?」と尋ねると、ろうの生徒が「さあ。電池はただでいっぱいもらえるから(現在は個人で購入するようになっています)」と言ったそうです。その事件後、脇中がすぐに同様の寸劇をして、生徒たちに感想を求めると、「その電池はもともとは国民の税金から出ているのだから、大切に使うべき」という意見が出たそうです。
6、遅刻
7、行き違い
8、ろう文化
脇中は「ろう文化」という言葉が鼻についてしようがないと感じた時期があったそうです。「ろう文化」が相手にだけ変革や改善を求める姿勢の正当化の道具として使われているように感じたからです。