未来社会の道しるべ

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こんな本があるからセクハラの誤解が蔓延する

前回の記事にも書きましたが、「部長、その恋愛はセクハラです!」(牟田和恵著、集英社新書)はセクハラの誤解を生みやすい本です。牟田はよりにもよって大阪大学教授のようです。こんな浅い人間観、社会観の人の給料が国費から支払われているのは残念でなりません。

にわかに信じられないかもしれませんが、この本で牟田は「(私は)不倫はよくないとの道徳観念を持っていない」と堂々と主張しています。それどころか「男性側が既婚者なのに部下の女性と性関係を持った不倫だから、教師が学生に手を出したから、けしからんという、古臭い性道徳でセクハラだと非難しているのではありません。『不倫なんて!』という保守的道徳観に凝り固まっているワンマン社長や『清く正しく』が売りのお嬢様大学だとクビになるのかもしれませんが(私は違います)」とまで書いています。牟田にとって、不倫は道徳的に問題ない行動のようで、教師が学生に手を出しても、非難する方がワンマン社長(ユニクロの柳井社長のことか?)のように「古臭い性道徳」に凝り固まっていて、間違っているようです。

なぜ牟田が不倫をそこまで感情的になって容認するのかは、この本で説明されていないので分かりません。牟田自身か、牟田に近い人が実際に教え子と不倫した経験があるからかもしれません。

なんにしろ、牟田は結婚制度がなぜ社会に必要なのか、深く考えたことがあるように思えません。その証拠に、こんな文章も本にはあります。

「筆者の知る業界の大物で、結婚と離婚を何度も繰り返していて、二人目以降は全部教え子、という先生もおられます(尊敬語!)。不倫の関係が破綻するとセクハラに転じがちなことは事実。それを避けるには、トラブルが切迫する前に結婚してしまうというのも手だということでしょう。でもこれは、経済的にも精神的にもタフでないとできないワザ。現在の妻にうまく分かれてもらえる力量も必要なのですから、ほとんど超人的です」

こんな倫理観の人が、男女関係の機微に触れるセクハラ問題の専門家になっていいのでしょうか。結婚と離婚を何度も繰り返す男を「超人的」と称賛しています。なにより疑問なのは、結婚と離婚を繰り返した場合、第一に考えるべき子どもの問題に全く触れていないことです。「結婚制度が社会に必要な理由」にも書いたように、結婚制度がなければ、離婚が自由にできるようになったら、一番困るのは子どものはずです。それを考慮せず、本人の経済と精神状況、妻と別れる力量に注目するなど、理解に苦しみます。

百歩譲って、子どもを無視して、男女関係だけを考えても、結婚制度がなくなって完全に自由恋愛になれば、社会に弊害は生じます。それは税金や規制の全くない自由経済を容認するようなものです。これに気づいていない人が国立大学のジェンダー学者にもいるようなので、次の記事で解説します。