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日本の医者はお金に無頓着である

診療報酬制度」の記事で、白内障手術の診療報酬を激減させたことに、良心的な眼科医は不平を言っていない、と書きました。その一番の理由は、白内障手術の診療報酬の激減前も後も、病院内での眼科医の給料は変わっていないからです。

そもそも、医者の給料はどのように変化するのでしょうか。私の知る限りでいえば、専門医をとる7年目から10年目までは順調に給与は上がります。そこからは伸び悩んで、部長や院長クラスになって手当がつくと、上がる程度です。都会よりは田舎の方が高収入で、病院勤務医より開業医の方が高収入です。以前の記事に書いた通り、同じ病院なら、科によらず給与は原則同じです。

ただし、良くも悪くも、日本の医者はお金に無頓着です。日本の医者社会では「出世=お金持ち」という発想が皆無です。「白い巨塔」などで知られているように、日本の医者ヒエラルキーのトップは医学部教授です。教授>准教授>講師>助教>医局員と縦社会になっており、日本の医者人生はこの医局村社会で完結しています。「隣の医局は外国より遠い」という言葉がある通り、自分の専門科以外については、その診断法も、その給料もあまり知りません。医局での出世競争に疲れたら開業医になったりしますが、たとえ給与が高くても、開業医は勤務医より格下です。

日本の医者が給料よりも名誉を求めるのは、どんな専門、どんな病院で働くにしても、医者である以上、生きていくだけに十分な収入が得られることは大きいでしょう。また、だからこそ、楽な眼科や皮膚科ではなく、大変な心臓外科を目指す医者が自然に出てくるのだと思います。給料が同じなら、楽な科に進もう、という医者は日本で一般的ではありません。むしろ、日本の医者はやりがいのある、自分に適した専門を選んでいるようです。医者が希望通りに専門を決めても、日本の医療が上手く回っているのは、「診療報酬制度」の記事に示したように、厚生労働省の診療報酬の調整にも原因がありますが、医者がお金の心配をしなくてもよかったことにも原因があるでしょう。