世界の人口の大部分を占める発展途上国は、20世紀までは後進国と呼ぶのが適切だったのでしょうが、現在は文字通りに爆発的に発展しています。産業革命の恩恵を一気に獲得している人たちが地球規模で何十億もいるのと対照的に、先進国の発展は停滞しています。19世紀、20世紀は先進国さえ見ていれば世界全体の動きが分かる時代でしたが、21世紀はそうではありません。21世紀は地球規模での人類史上最大の変化が起こり、自然環境破壊がこれまで以上に注目されるでしょうが、それらの問題の中心は全て発展途上国にあり、先進国ではありません。経済問題、環境問題を筆頭に、21世紀は否応なく、これまで後進国だった世界人口の大多数の国家群に、先進国家群が適切に対応することを求められます。
21世紀がこのような時代になることは、わざわざ私ごときが書くまでもないかもしれません。ただし、多くの人がまだ上記のような時代の流れに気づいていないようにも思います。「中国やインドが21世紀中にGDPで世界の1位と2位になる」ことは分かっていても、中国やインドの世界への影響力が強くなることまでは想像できていない、としか思えない知識人もいます。発展途上国と先進国の経済成長率の差を比べれば、世界中で一人あたりの経済格差が縮小に向かうのは必然です。当然、現在の発展途上国家群は、世界での存在感が大きくなっていきます。環境問題が深刻化してくると、その途中で惨憺たる悲劇が生じないとは断言できないはずです。それにもかかわらず、数十億人の発展途上国家群の経済成長に対応するための解決策や方法論を、少なくとも私は聞いたことがありません。
いつまでも先進国家群が世界を動かすとの幻想を捨てて、まずは上のような簡単な未来予想をして、手遅れにならないうちに問題を正しく把握して、適切な解決法を考えてみるべきでしょう。