未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

医療

医療はゼロをプラスにする役割が苦手である

医療の基本ですが、専門職でもこの基本を認識していない人は多くいます。ほとんどの医療は病気を治すことに特化しています。医療はマイナスをゼロにすることは得意でも、ゼロをプラスにすることは苦手なのです。 その大きな理由は、健康の度合いを科学的に判…

日本は医師過剰である

日本は医師不足とニュースでよく見る現在からは信じられないかもしれませんが、2007年まで日本は医師過剰と公的に判断されていました。医学部の1年あたりの定員数は81年~84年の8280人から減少の一途を辿り、2007年には7625人にまで減った事実があります。し…

がん検診に上限年齢は設けるべきである

ほとんどの病気は早期に発見し、治療されれば、症状が小さくて済みます。早期発見早期治療が医療の基本なのは事実です。ただし、早期に発見できない病気もあれば、早期に発見できたとしても治療の副作用が大きく、治療すべきでない病気はいくらでもあります…

健康への欲求は無限である

数年前まで病床利用率が50%未満の大赤字の市民病院が私の県にありました。その市民病院が儲からなかったのは、設備の整った大病院が近隣にいくつもあり、市民の多くはそれらの病院を利用していたからです。 当然、市議会では市民病院の閉鎖案が出されました…

死生観の社会的向上と個人の幸福

医療の発展は、医学の進歩だけで決まるものではありません。公衆衛生の向上は、医学の進歩以上に、人類の健康増進に役立っています。また、社会全体の死生観の向上も、医療の発展あるいは個人の幸福に繋がっています。 たとえば、20年以上前の日本では、癌告…

ピンピンコロリは違法である

前回の記事で、医学が進歩したため、ピンピンコロリが実現できなくなった、と私は書きましたが、それはおかしな話です。医療技術が発展すれば、人間は苦しみながら死ぬしかない、会話ができなくなるまで、トイレが使えなくなるまで、歩けなくなるまで、生き…

ピンピンコロリは理想でない

「直前まで元気で、急に死ぬ」といった意味のピンピンコロリは、10年ほど前、マスコミで理想として持て囃されていました。今でも、ピンピンコロリを理想と考えている高齢者は少なくないようです。 しかし、ピンピンコロリが現実に起こったら、どうなるでしょ…

ピンピンコロリは無理である

10年くらい前、全国紙を始めとしたマスコミで「ピンピンコロリ(略してPPK)」という言葉が流行しました。「人生の最後までピンピン元気でコロリと死ぬ」といった意味で、主に「そんな死に方が理想である」という前提で使われていました。その頃の私は医療従…

医療革命

いずれ必ず導入されるAI医療では、「医者の消滅」「医者決定医療から自己決定医療へ」「無駄な医療の削減」が三大改革になるでしょう。「医者の消滅」「医者決定医療から自己決定医療へ」は前回までの記事に書いたので、ここでは「無駄な医療の削減」につい…

医療の本質

50年後の日本人からすると、人間が医療診断している現在を信じられないでしょう。命に係わることを、間違うこともある人間の判断に任せていたなんて、ありえないと考えるはずです。 その未来の人に言い訳をすると、2018年現在でも、同じ感想を持っている人は…

日本は世界で最初に医者のいない国を目指すべきである

結局、僕は東大に入らず、アメリカ西海岸の大学の医療工学部に進学することにした。最高のコンピュータ教育を受けさせてくれた父の期待を裏切ることになるが、僕は日本の大学に入る選択はどうしてもできなかった。 僕の祖父は東大卒の心臓手術師であった。い…

「薬品業界は不正の温床」という格言

海外の医学会に参加して、全てのパンフレットの裏表紙に「当学会は製薬企業から金銭支援を受けていません」と書いてあるのを見て、異様に感じる日本人医師たちが(残念ながら)います。ちなみに日本では、ほぼ全ての学会で製薬企業がスポンサーに入って、医…

門前薬局は日本から消えるべきである

「医薬分業は日本医療行政史上に残る大失敗」の記事で、国が医薬分業(病院から薬局を分離)を進めたのは、薬漬け医療を抑制するためと書きました。では、全医療費に占める薬剤費比率は減ったのでしょうか。残念ながら、この20年間ほど横ばいで、減っていま…

薬剤師が不要であると見抜けなかったツケ

薬学部にこんな授業があることを知っているでしょうか。医師の処方箋(患者に出した薬品名リスト)から、患者の病気を推測する授業です。それを聞いた医学部生は驚き、全員がこう言いました。 「なぜそんな無駄なクイズ授業があるの? 処方箋に病名書いてお…

医薬分業は日本医療行政史上に残る大失敗である

上のグラフが示しているように、20年前まで日本では病院で薬をもらうことが普通でした。病院で処方箋をもらった後、病院の外にある薬局に処方箋を提出して、薬をもらう手間がなかったのです。しかし、「医薬分業が海外では当たり前である」という主張がなぜ…

患者中心医療を実現するには患者も変わらなければいけない

「昔の医者は患者から賄賂もらっていたんですよね?」 私が年配の医者にこのような質問をすると、ほぼ決まって嫌な顔をされました。社会の腐敗を軽蔑してやまない人(私)に、それに関わった過去を白状したくないからでしょう。多くの医者はこう言い訳しまし…

開業医こそ日本医療の諸悪の根源である

日本の医療従事者で、日本の開業医制度に問題がないと考える人は皆無ではないでしょうか。その最大の理由は次にあります。 「開業医が勤務医よりも遥かに楽なのに、開業医が勤務医より給料が遥かに高い」 勤務医とは病院に勤務する医者で、開業医はクリニッ…

感染症は栄養摂取と休養が最適の療法である

上のタイトルは特に呼吸器感染症にあてはまります。日本の外来患者のかなりの割合を占める上気道炎(風邪や扁桃炎)、インフルエンザ、肺炎(特に非定型肺炎)は薬なしで治ります。これらの病気で、わざわざ寒い中クリニックまで来る必要はないし、大して効…

日本の医者はお金に無頓着である

「診療報酬制度」の記事で、白内障手術の診療報酬を激減させたことに、良心的な眼科医は不平を言っていない、と書きました。その一番の理由は、白内障手術の診療報酬の激減前も後も、病院内での眼科医の給料は変わっていないからです。 そもそも、医者の給料…

診療報酬制度

日本の皆保険制度では、ほぼ全ての病院、ほぼ全てのクリニックが厚生労働省の定める診療報酬制度に従って収入を得ています。血液検査などの各種検査の費用、肺炎などでの各種入院費用、虫垂炎などの各手術の費用は、全国一律で決まっています。病院によって…

自由専門医制

オーストラリアの医学生が脳外科医志望だと自慢気に言いました。日本人医学生は総合診療医志望だと言うと、オーストラリアの医学生は驚いています。 「なぜ総合医志望なの? せめて内科医を目指したら?」 医者社会では、総合医<内科医<外科医というヒエラ…

老後に1千万以上の貯蓄の必要性はないし、あるべきでもない

「老後には〇千万円の資金が必要です」という嘘広告はよくあります。これが銀行広告なら預金の宣伝として、まだ許されるのでしょうが、一流新聞の記事でも平気で同じ主張が載っていたりします(日本経済新聞2016年7月20日朝刊など)。 そんな広告を見て、一…

3時間待ちの3分診療は問題なのか

日本の医療不満では、待ち時間の長さが上位に来ることがあります。その一方で診察時間は極めて短いです。いわゆる「3時間待ちの3分診療」と呼ばれる問題です。他の先進国の医療事情をある程度知っている私からすると、これは贅沢な不満だと思います。 診察待…

予防は治療に勝る

上記の表は「スウェーデンにおける医療福祉の舞台裏」(河本桂子著、新評論)からの抜粋で、著者が務めるスウェーデンのリハビリセンターでの活動件数です。日本人医療者にとって驚きなのは学校訪問と家庭訪問の数でしょう。10件の通院患者に対して、学校訪…

福祉先進国・北欧は幻想である

スウェーデンなどの北欧国家は福祉先進国との固定観念が日本にあります。日本以外でこの固定観点が強いかどうかまで知りませんが、普通の日本人が北欧の医療・福祉を体験して、感激することはまずないと思います。私も北欧の医療や福祉を褒めている日本人に…

アメリカの医療は先進国最悪である

国全体での医療費高騰の一番の原因を次の中から選べ。 1、国民所得の上昇 2、医療技術の進歩 3、高齢化 4、医療保険の普及 5、病気の蔓延 日本の医学部には準国家試験に等しいCBTという全国統一試験があります。現在それに合格しないと、5年生以降の病…

世界から注目される高齢化先進国・日本

「日本は世界最高の高齢化先進国ですから、日本がどうやってその問題に対処していくのか、私たちは注目しています」 大学時代に留学生たちから、こんな言葉をよく聞きました。日本の高齢化率が世界最高だということは、どんな発展途上国から来た人でも知って…

近代病院は医者ではなく看護師により創られた

ナイチンゲールは資本主義勃興期のイギリス家庭に生まれました。貧富の差が極限まで広がっていた時代の上流階級であり、名前のフローレンスはイタリアの都市「フィレンツェ」のことです。両親が2年間の新婚旅行中にフィレンツェでナイチンゲールを産んだこと…

医学的根拠で最も重要なのは確率的妥当性である

ノーベル賞受賞者の山中伸弥と将棋の羽生善治の対談動画あります。 www.youtube.com この動画の25分以降に、羽生が「AIは確率的にこちらが正しいと言っているだけで、その理由の説明がない。医療のような世界で、理由がよく分からないのでは、命を預けられな…