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日本のコメですら輸出品目にできる

「日本の農作物に輸出競争力などあるはずない。特にコメは世界一単価が高いので、全くない」と考えている日本人は多いのではないでしょうか。「2025年日本の農業ビジネス」(21世紀政策研究所著、講談社現代新書)を読むまで、私も似たようなことを考えていました。しかし、日本のコメですら輸出競争力があると、この本は示しています。

コメは日本の農作物で最も手厚く保護されてきた品目で、関税率は778%(つまり原価の8倍)であり、全品目のトップです。この数値を見ると、海外産のコメは日本のコメの8分の1の値段で流通しているので、日本のコメは一部の好事家にしか売れないと考えてしまいがちです。しかし、この関税率は1986年~1988年のコメ価格を基準に決められている上、そもそもの計算方法に不明なところが多く、とても現状の価格差に対応した関税にはなっていません。本によると、現在の日本米の単価はアメリカ米の単価の2倍程度の差しかありません。2倍でもまだ大きな差ですが、日本でも既にアメリカの平均単価以下の費用でコメを生産している農家が存在しています。

その第一は、まず規模です。日本には水田面積の小さい零細農家が多すぎて、規模のメリットが発揮できず生産性が低いことは、さすがにこの記事を読む方なら十分知っていると思うので、あまり書きません。

第二は、技術革新です。たとえば、田植えの省力化です。「田植え」とは、あらかじめビニールハウスで種から育てた苗を、水田に運んで田植え機で植える作業です。田植えに適した時期は限られるので、水田面積を拡大すれば、苗を育てるためのビニールハウスの面積も、田植え機の台数も増やさなければなりません。多くの人はこの「田植え」の常識について疑っていません。しかし、田んぼに種もみを直接植える「乾田直播」という技術が存在しています。さらに、この「直播栽培」と、通常の田植えの「移植栽培」を併用し、直播の田んぼに種を播き、この作業が終わったところで田植えをすれば、作業時期がずらせて、少ない人手や機械で作業が完成します。

また、グレーンドリルという種まき用機械を小麦とコメの直播に使って、コンバインも小麦とコメの両方に使えば、稼働率が高くなるので、コストダウンにつながります。

こういった努力の結果、生産費を4割ほど削減し、労働コストを平均の5分の1まで下げた農家が実際に存在しているようです。

ところで、結局、話が流れたTPPでも、日本は農林水産物の433品目の関税維持を譲ろうとしませんでした。言うまでもなくJA(農協)が大反対したからです。特に「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの重要5品目は守る」と国会決議まで行っています。

本によると、5品目のうち、テンサイやサトウキビなどの甘味資源作物は国際競争力に全く欠けて、乳製品も大胆な構造改革が必要なものの、コメは上記のように、方法次第で競争力があると判断され、同じ評価が小麦にもされています。さらに、牛肉・豚肉については、関税が削減されても十分に競争力がある、とされています。

長くなるので、コメ以外については上記の本を参照してください。ともかく、コメ農家の保護にはTPPという国家の大きな経済外交戦略すら左右してしまう事実があるので、日本農業はコメですら輸出品目にできる潜在力があることを多くの日本人は知るべきでしょう。