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病気の子どもは保育園に行かないべきか

病児保育なるものがあると知ったのは、私が病院で働くようになってからです。病児保育とは、病気になった子どもを保育所ではあずかれないので、保育所の代わりにあずかってくれる施設です。子どもが病気になったからといって、両親は仕事を簡単に休めない時があるので、国も病児保育の拡張を推進しています。

病児保育拡張の前に私が気になるのは「病気になった子どもを保育所ではあずかれない」という点です。

(僕が子どもの頃は、そんなルール、なかった気がする)

病気であっても元気に動いているなら、母親は保育園に私を平気で連れていっていました。生まれてから今まで私は混じりっけなしのバカなので、風邪でもあまり気にせず、保育園も学校も仕事も行っています。本当に辛いときは学校や仕事を休みますが、クリニックに行っても風邪や胃腸炎と言われるだけで、(特に医療者になってからは)それらに有効な薬がないのは分かっているので、クリニックにかかることもなく、横になって栄養だけ摂っています。私が風邪で保育園に行っても、保母さんが体温計で熱を測ることもなく、「鼻水出ているねえ」と言いながら、普通に受け入れていたように記憶しています。

現在、私は0才児の子どもがいますが、生後6ヶ月を過ぎて母親の抗体が切れたため、風邪や胃腸炎にかかりまくっています。この前の年末年始、ノロ(おそらく)で1日10回も下痢していて、ようやく下痢しなくなったと思ったら、昨日、派手に嘔吐して、またも下痢が始まりました。

(ロタはワクチンを打っているので、今度はなんだ?)

そう思って調べてみたら、ノロは遺伝子が31種類もあるので、再度ノロの可能性もあると知って、「また1週間も下痢地獄が続くかもしれないのか」とげんなりしています。胃腸炎とは別に、先週から鼻水も出っ放しなので、風邪にも感染しているようです。しかし、子どもをクリニックには連れていっていません。赤ちゃんにミルク飲ませても嘔吐してしまうと救急外来に受診する父母対応に、私自身、悩まされた経験があるからです。「一度に飲ませると吐いてしまうので、少しずつ時間を空けて飲ませてください。こんなに力強く泣いている間は問題ありません」といった言葉は1年間で20回は言ったでしょうか。

「子どもはなんの抗体も持っていないから、一度、ほとんどの感染症にはかかります。そのおかげで、将来、同じ病気にかからなくなるので、むしろ安心していいと思います」

こう言ったこともありましたが、扁桃体が興奮しまくっている両親に、そんな理屈は通用しませんでした。(目の前にこんなに苦しそうな赤ちゃんがいるのに、心配しないでいられるか! 今死んだら、将来もないだろう!)という目で見られたので、同じセリフは二度と言いませんでした。

しかし、私の子どもが病気になった時の感想も、上の理屈と同じです。

(保育園も学校も行っていない間に病気になってくれて、よかった。どうせ感染するなら、今感染してくれた方が時間の有効利用だ)

ところで、どうして私の子どもは風邪や胃腸炎を連続で発症しているのでしょうか。まあ、思い当たる節は、山のようにあります。私の食い意地を遺伝させてしまったようで、子どもはバカみたいになんでも口に入れます。自宅の中だけならあまり感染しなかったでしょうが、近所のスーパーのキッズルームで手当たり次第に玩具を口に入れています。あれで経口感染しないわけがありません。冬になってから鼻水は際限なく出るし、空咳は止まりませんし、嘔吐も下痢もよくしますが、それでも元気に叫んで、動き回るので、生まれてから今まで、K2シロップや軟膏を除けば、薬を使っていません。

こんな考えに基づいて子どもの健康を管理しているので、「子どもが病気の時に保育園を休ませなければいけない」理由に、納得できません。インフルエンザだと「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで出席停止」と法律で決まっていますが、変えるべきだと思います。新型インフルエンザなら分かりますが、ワクチンのある普通のインフルエンザで、乳幼児の死亡率0.1%未満のインフルエンザで、ここまで法律で決めるべきではないでしょう。もちろん、休みたい人は休んでいいですし、本当に重症なら休むべきですが、インフルエンザと診断されたら、全員一律で休ませることはないと考えます。

私の友だちに、医療資格の国家試験の時、インフルエンザにかかった人がいました。休むと1年間浪人することになるので、周りに迷惑をかけるのは承知で受験し、合格していました。もしかしたら、彼の近くにいてインフルエンザになった人もいたかもしれませんが、彼を責めることはできないと私は考えます。インフルエンザになったら、「他の人にうつさないよう、外出しないでください」と医者はよく言いますが、毎年、あそこまで流行しているのですから、知らないうちにインフルエンザをまき散らしている人なんて山のようにいます。一人の感染者が外出しない程度で、どれくらい感染抑制効果があるのか私はいつも疑問に感じています(誰か統計的に調べてほしいです)。本当に重要なのは、インフルエンザの予防接種と、インフルエンザに感染しても重症化しないような基礎体力作りではないでしょうか。

インフルエンザでさえ上のように私は考えているので、風邪や胃腸炎程度で強制的に保育園を休ませるのに反対です。医学的にいって、抗体のない幼児は感染症にかかるものですし、免疫力を作るために、かかるべきです。幼児同士で感染症をうつすのは自然ですし、将来のことを考えれば、むしろ好ましいはずです。幼児は脂肪細胞が大人と違って発熱しやすいので、38℃程度で休ませていたら、病児保育がいくらあっても足りません。両親だって、病児保育よりも、いつもの保育園に行かせたいはずです。だから、登園したら体温を測るなんてバカなことはやめて、(私の子どもの頃のように)多少の病気なら保育園や幼稚園は強気で受け入れることを提案します。