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日本は幕末外交の失敗を150年間も繰り返し続けている

「知ってはいけない2」(矢部宏治著、講談社現代新書)には、こんな文章が出てきます。

「米国の外交はアメフト型。プレイヤーはフォーメーションに従い陣形を組み、バックヤードでは多くのスタッフが過去のデータを徹底分析し、最善の1手を指示する。一方、迎え撃つ日本の外交はまるで騎馬戦。常に3~4人のチームで情報を独占し、しかも引き継がない。これでは百戦百敗になるはずである」

問題先送り外交」や「日米和親条約にある不平等条項」の記事で示したように日米和親条約では、日本の主権を犯す重要条項が無知な現場担当者の一存であっさり決まった歴史的事実があります。その痛恨の失敗を、どれくらいの外交官、どれくらいの日本人が知っているのでしょうか。センター試験の世界史で9割以上をとった私も、日本開国史(石井孝著 吉川弘文館)を読むまで全く知りませんでした。ほとんどの日本人が過去の歴史からなにも学んでいないから、今に至るまで優秀な(はずの)外交官たちが「アメフト対騎馬戦」の失敗を繰り返しています。

無知により国家主権を犯された失敗、国家利益を失った過去は、今からでも周知を徹底すべきです。小中高の全ての歴史教科書に必ず載せて、入試にも頻出にするべきです。そうすれば、日本のエリートなら必ず覚えますから。

「亡国の密約」(山田優著、石井勇人著、新潮社)にも書いてある通り、ウルグアイラウンドでも日本は同じ失敗を繰り返しています。日本側は一部の官僚だけが交渉し、その情報を独占しているのに対して、アメリカ側は一部の官僚に交渉は任せるものの、情報は常に政府全体で共有していました。情けないのは、アメリカが政府全体で情報共有し、全体で知恵を出し合っていることを、日本政府が全く気づいていないことです。交渉している数人の日本の官僚たちでさえ、「秘密とお願いしているから、向こうも情報は数人しか知らないだろう」と勝手な希望を抱いていたのです。頭の回転は恐ろしく早いはずなのに、根本的なところで間違っているので、致命的な失敗を犯している良い例でしょう。「問題を発見できないエリートたち」でも書きましたが、日本人らしくない私が日本のエリートたちを見ていると、こういった失敗をよく発見します。