未来社会の道しるべ

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日本は今も不平等条約を結んでいる

「知ってはいけない」(矢部宏治著、講談社現代新書)を先月読んで、茫然としてしまいました。著者は立花隆を尊敬しているようですが、その立花隆の全ての本をこの一冊で凌駕しているのではないでしょうか。日本の主権が米軍に蹂躙されていること、あるいは、全ての日本人の尊厳に関わることが書かれています。

「日本が不平等条約を結んでいたのは明治時代だけではない。現在の日本にも日米地位協定という不平等条約が存在する」という説は、ネットで何度か見かけたことはがあり、それらを熟読して「確かにその通りだ」と考えてはいました。しかし、やはりネット情報なので、半信半疑のままでした。そういったネット情報には「米軍は日本国憲法を無視できる」や「米軍は日本のどこにでも自由に基地を置く権利がある」といった極論があったので、さすがにそれは陰謀論だと私も考えていました。

ただし、「北方領土がロシアから返還された場合、米軍が北方領土に基地を置くと主張すると、日本は拒否できない。だから北方領土返還交渉が行き詰まった」といった情報が新聞にも載るようになったので、「米軍は日本のどこにでも自由に基地を置く権利がある」は極論ではなく、むしろ「冗談抜きで、米軍は日本のどこでも基地にできる。それこそ北方領土にだってできる」らしいことが分かってはきていました。

そういった日本外交の謎が2年前には「知ってはいけない」でスッキリ解けていたこと、それ以前にも同様なことを書いた本は何冊も出版されていたことを今頃知りました。いくつもの密約が絡み合っている複雑な構造ではありますが、著者も書いているように、分かってしまえば単純な構造です。日本が戦後の米軍統治時代に米軍に認めた特権を、統治時代後も現在まで密かに認めるためにできた構造です。1回の密約だけでなく、何度も密約を結んでいますが、基本的な構造は次の通りです。

「古くて都合の悪い取り決め」=「新しく見かけのよい取り決め」+「密約」

しかし、密約であるため、現職の日本の総理大臣もよく分かっていません。もちろん、外交官も学者もよく知りません。嘘みたいですが、本当です。しかも、日本がアメリカの植民地になっているのではなく、米軍の植民地になっているので、ライス元国務長官が「いったい、どんな関係になっているの?」と言ったり、スナイダー元駐日公使が「こんな占領中にできた異常な関係はすぐやめるべきだ」と発言したりもしています。

日本に成田から入国したアメリカ人は日本の法律で裁かれますが、米軍基地から米兵はパスポートなしで入国できる上、日本にいるのに日本の法律で裁かれることはありません。米軍には米軍基地内だけでなく、日本中で治外法権が認められているのです。ありえない、あってはならない現実が今の日本で存在しています。

新聞を読んでいると、特にアメリカとの外交関係では「なぜこうなっているんだ」「どうしてそうなるんだ」と思うことが、私にはよくあります。上記の北方領土交渉の行き詰まりは、そのいい例です。そういった摩訶不思議な事件が、裏にこんな事実があるなら、納得できます。

「知ってはいけない」で著者が一番驚いたことがあるそうです。

「米軍機は日本中のどこでも低空飛行をしてもいい。だから、米軍基地外の日本領土で米軍は墜落事故を何度も起こしているが、米軍が日本の警察よりも早く操作と事後処理をするし、その事故が日本の裁判所で裁かれることはない」

ここまでで日本の主権が犯されていることは明らかですが、さらに続きます。

「米軍機は、日本の米軍住宅の上では絶対に低空飛行してはいけない。危険すぎるからだ。アメリカの法律で禁止されているコウモリなどの野生生物や歴史上の遺跡の日本の上空も、軍事訓練はできない。ただし、日本人の住宅上では低空飛行しても構わない」

コウモリを保護するために禁止されている米軍の低空飛空を、日本人にはしてもいいそうです。つまり、日本人の人権は野生動物以下にされているのです。

著者の言う通り、反米とか、親米とか、それ以前の問題です。日本人どころか、世界中の誰が考えても、おかしいです。

こんな状況が60年以上も続いているなんて、ありえません。今すぐ、このおかしな状況を変えるべきことに異論を挟む日本人はいません。