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日本史上最低の人物・辻政信

日本史上最低の人物という概念自体、多くの人は持っていないでしょう。私も辻政信を知るまでは、そうでした。しかし、辻政信を知ってからは、「コイツは正真正銘の日本の歴史上最低最悪の奴だ」と考えて、それが間違っていると思ったことは10年以上ありません。ついでに書いておけば、アメリカ史上最低の奴はベトナム北爆と日本の絨毯爆弾を主導したカーティス・ルメイだと私は考えています。

辻政信は歴史的大敗のノモンハンと、フィリピンでのバターン死の行進の悲劇を引き起こした人物で、満州事変を勃発させた石原莞爾の側近です。バターン死の行進は日本だと存在自体あまり知られていませんが、日本がアメリカ人にもたらした文句なしの非道な行為です。アメリカは今でも「真珠湾攻撃は日本の騙し討ちだった」として第二次大戦時の日本を非難するのが一般的ですが、これに異論を持つ日本人(と一部のアメリカ人)は少なくありません。「アメリカが日本の通信をあれだけ傍受しておいて、騙し討ちもなにもないだろう。むしろ、山本五十六の作戦勝ちだ」という意見には一理あるはずです。しかし、バターン死の行進は、どんなに日本を擁護したい人でも、その残虐性を認めるしかありません(もっとも、当時の日本軍ではこのように人を見殺しにする指導は当たり前だった、と擁護する道徳観の崩壊した日本人が実際には今もいます)。その残酷なバターン死の行進中に、さらに残酷なフィリピン人やアメリカ人を虐殺する「大本営命令」を勝手に出した張本人が辻政信です。バターン死の行進ノモンハンに限らず、辻政信は独断専行が甚だしく、しかも、その結果として大失敗しても、責任をほとんど取らされず要領よく動き回った最低の人物です。

辻政信が崇拝した石原莞爾は、太平洋戦争勃発時の首相である東条英機のライバルだったせいか、未だに英雄視する人がいます。しかし、石原莞爾東条英機に権力争いで勝ったとしても(権力争いというより幼稚な意地の張り合いと言う方が正確ですが)、やはり日本はアメリカと戦争を始めたと確信します。むしろ、「世界最終戦争」という妄想を持っていた分、石原がアメリカとの戦争をする時期は1941~1945年より遅れて、アメリカが日本に使用した核兵器は2つで足らず、日本人は最後の最後まで戦い、現実にあった太平洋戦争の10倍以上の悲惨な状況を生んで、日本という国が完全に消滅していた可能性も高いと考えます。

なお、1960年のアメリカ大統領選でケネディではなくニクソンが勝っていたら、キューバ危機時にカーティス・ルメイの強硬策を採用して、第三次世界大戦になり、何億人もの人が核戦争で死んだ可能性は低くない、と私は考えています。

辻政信もルメイも、知力は高かったようですが、倫理観が最低です。知力が低くて倫理観が悪い奴よりも、社会に悪影響を与える代表例でしょう。