未来社会の道しるべ

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公的交際ネット制度

結婚のない社会の弊害」にも書きましたが、自由恋愛の規制として結婚制度は必要です。西洋では結婚以外の規制、たとえば民事連帯契約(PACS=パックス)があります(よく誤解されているようですが、パックスは事実婚ではありません。西洋でも事実婚事実婚として法的に保護されており、事実婚より強い法律上の結びつきで、裁判所に公証してもらった関係がパックスです)。一方、日本は結婚以外の規制がなく、それが原因かどうかはともかく、未婚が増えて、少子化が深刻な社会問題になっています。

パックス制度をそのまま日本に導入してもいいかもしれませんが、裁判所などの役所が関わると人件費がかかるので、次のような公的交際ネット上での公的交際制度はどうでしょうか。

 

1、特定の二人の交際関係は公的ネット上に公開される

2、交際関係を同時に結べる相手は一人だけである

3、交際申し込み、および交際申し込みの受け入れは公的ネット上で行う

4、既婚者および交際中の者を相手に交際申し込みはできない

5、交際申し込みは一人の相手にのみできる

7、交際申し込みはいつでも断ることができ、保留のままにすることもできる

8、一つの交際申し込みを受け入れると、そのときに受けている他の交際申し込みは全て断ったことになる

9、交際申し込みを相手が保留している時に、申し込んだ側が交際申し込みをキャンセルできる

10、交際関係はいつでも一方的に破棄できる

 

パックス関係と違って、交際関係にあっても相続権や税制の優遇措置などは全くありません。現状での「交際関係」と公的交際ネット上での交際関係は、法律上の関係が同じです。また、上のルールを守らなくて、事実上の交際関係になっても、一切罰則はありません。それだと公的交際ネット制度を無視する人が続出して、存在する意味がほとんどなくなるので、以下のような罰則を設けます。

 

11、公的交際関係にない二人が性交渉した場合、あるいは性交渉したと十分に疑われる場合、その二人のどちらかの交際相手、およびその二人のどちらかへの交際申し込みを断られた未婚者(交際申し込みを自らキャンセルした者を除く)が、その二人から精神的な損害賠償を受けることができる

 

この制度の目的は、最終的に少子化を食い止めることにありますが、第一にモテる者がよりモテる状況、モテない者がよりモテない状況を改善することにあります。結婚にしろパックスにしろ1対1の関係なのに、自由恋愛ではどうしても一部の人に人気が集中してしまいます。交際なら1対多の関係でもいいと思う人もいるでしょうが、さすがに子どもができる性関係まで1対多で結んでしまうのは問題のはずです。「父親が誰か分からない」「複数の女性を同時に妊娠させた」といった問題が発生します。

また、普通であれば、1対多の「1」にいる人が性関係を持てば、選ばれなかった「多」にいる人たちに大きな精神ショックを与えます。せめて性関係を結ぶ前には、公的交際関係になっておくと、「多」の人たちは既に公的交際ネット上で断られているので、ある程度諦めはつくでしょう。

公的交際ネットの目的の他の側面は、結婚前の交際関係の段階で、浮気と高望みを減らすことにあります。浮気を減らす利点は上に書きました。高望みを減らす利点は未婚も減らせることです。「仕事と家族」(筒井淳也著、中公新書)では、未婚が増えた原因(≒少子化の原因)として、女性の高望みがあると推論しています。高望みがあると、どうしてもミスマッチが増えて、結婚前の交際すら減ってしまいます。同時に複数の交際関係を結ぶことが難しくなると、1対1の関係は増えるため、必然的にミスマッチは減るはずです。

なお、誰と誰が交際関係にあるかは公的ネットで公開されますが、誰が誰に交際を申し込んだか、誰が誰の交際申し込みを断ったかは公的ネット上に公開されません。そのプライバシーは確保されます。

他に、以下のような項目の公開も考慮していいと思います。最終目的は少子化対策なので、次のそれぞれの公開項目については、うまくいかなければやめたりして、調整すればいいでしょう。

 

12、現在交際申し込み中かどうかを公的ネットで公開する

13、過去の交際の経験数を公的ネットで公開する

14、現在受けている交際申し込みの数を公的ネットで公開する

15、過去の交際申し込みを断った回数を公的ネットで公開する

 

これにより「既に交際したい相手がいる」「交際ばかりしているが結婚していない」「競争相手が多い」「交際申し込みを断ってばかりいる」ことが分かり、ミスマッチは減ると期待できます。

公的交際ネット制度の致命的な欠点は「公的交際関係=結婚前の性的関係」と見なされることです。「セックス親バレ制度」「婚前交渉白状制度」「セックス規制」などと批判されることも間違いありません。公的交際関係に慎重になりすぎて、結果として結婚も少なくなったのなら、意味がありません。

しかし、現状のままだと少子化を食い止められないのはほぼ確実なので、パックス制度にしろ、公的交際ネット制度にしろ、改革を断行すべきでしょう。あまり指摘されませんが、「性行為→結婚」の流れが減ったことは未婚率の減少と密接に関係しているはずです。公的交際ネット制度が性行為→結婚の流れを増やし、少子化を食い止める可能性はあるので、考慮してみてはどうでしょうか。