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ある氷河期世代の叫び声

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上は2017年12月8日の朝日新聞社説余滴です。ちょうど私の世代である「氷河期世代」が就職時期だけでなく、現在に至るまで、経済的損失を被っている統計を示しています。上の世代と比べても、下の世代と比べても、今の好景気時に失業者の減少が鈍く、非正規雇用の減少も鈍いそうです。さらには、大卒正社員であっても、5年上の世代より月給で2万3千円も低く、あまりの差額に、桁を間違っていないか計算し直した、とまで書かれています。

本当か嘘か分かりませんが、私が中国にいた時、文革世代は就職が難しいので、雇った者に補助金ができるとの噂を聞きました(「文化大革命と西洋人への皮肉」参照)。日本で上記の氷河期世代程度の格差が補助金で是正されるのは、あと何百年必要か予想はできません。ただし、上の記者も気づいていないと思いますが、氷河期世代への皺寄せは、他の世代にも未来にわたって悪影響を与えています。少子化を促進したからです。第三次ベビーブームが来なかったのは、氷河期世代が貧しくなり、結婚できなかったことと無縁でないはずです。

しんがり山一證券最後の12人」(清武英利著、講談社)という本があります。1997年に不祥事を繰り返して、自主廃業した山一証券に最後まで残り、後始末をした人たちの「偉業」を称えたノンフィクションです。廃業が決まった後、自分の責任を棚に上げて、多くの山一社員どもはさっさと再就職していったそうです。それを潔しとせず、清算事業に邁進した「誠実な」社員たちの本です。

もちろん、いけしゃあしゃあと再就職していった山一社員は日本社会のクズで、本来なら山一からもらった給料を1円に至るまで全額返金すべきです。そのクズどもがバブル崩壊の責任を全く負っていないとしたら、今からでも取らせるべきです。もし山一の後始末の本を書くなら、そいつらの責任に重点を置くべきです。しかし、この本ではそんな追及はろくにせず、むしろ「崩壊する会社から逃げるのは仕方ない」といった視点で書かれています。そして、最後まで清算業務をしていた社員たちを異常なほど称賛しています。私にはこれに強い違和感があります。

山一があれだけひどい不祥事を起こしたのですから、借金を全額返せない以上、最後まで清算業務をするのは最低限の義務です。「誠実な偉業」ではなく、当然果たすべき仕事です。理想としては、社員であるなら、山一の不祥事をもっと早くに内部告発すべきでした。「役員が不祥事を内部にも秘密にしていた」のなら、情報公開を求めるべきでした。「上司に逆らえる社内環境でなかった」のなら、その異常さを指摘して、是正すべきでした。それをしていなかった以上、山一から何百万や何千万もの給与を受け取って、返す気もないのなら、悪徳企業の片棒を担いでいた1人と糾弾されても仕方ありません。清算業務など胸を張る偉業ではありません。山一で働いていた過去全てが隠すべき黒歴史のはずです。

なにより驚いたのは、その最後まで残った山一社員たちでさえ、60才を越えている人も含めて、コネを使って高給の仕事にちゃっかり再就職できている点です。同じ時代に彼らの半額の給与の仕事さえ得られなかった私としては「どこまで恵まれているんだ、テメエらは!」と叫びたい気持ちでした。

話を戻します。バブル世代やその上の世代が若者たちを犠牲にして、恵まれた仕事を囲い込んだせいで、氷河期世代が子どもを作れませんでした。そのツケは、バブル世代以上の恵まれた人たちにも、長引く不況として、介護不足として、将来に渡って悪影響を与えていきます。恵まれたそいつらは逃げ切れたとしても、恵まれたそいつらの子どもたちは逃げ切れません。バブル世代以上の恵まれた日本のクズどもは「ブラック企業で精神をすり減らしている若者が30才になっても年収300万円なのに、それより遥かに楽に生きている自分がどうして年収600万円ももらっているのだろう」と考えることはありません。その逆で「自分より楽な仕事をしているはずのアイツがあれだけの年収なのに、どうして自分は低いのか」と自分以下のクズを羨ましがっています。

バブル世代以上のツケを払うことになる未来の世代に伝えるために、この記事を残しておきます。