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出稼ぎ目的の外国人が日本で実習生と留学生になる理由

「ルポニッポン絶望工場」(出井康博著、講談社+α文庫)には、全ての日本人が知るべき日本での移民の実態の一端が書かれていました。誰もが知っている通り、今後、日本の少子化は深刻化していきます。同時に移民賛成派と反対派で日本の世論も分かれるはずです(もっとも、この調子で少子化ジェットコースターを滑り落ちても、移民賛成派が一定以上生まれない可能性も「日本なら」ありえる、と私は思っています)。

現状を知らなければ、移民賛成論も反対論も空虚になります。この書籍で示されているほど混乱し、腐敗している移民政策を日本がとっていると、ほとんどの日本人は知らないはずです。だから、このブログにも示しておきます。

私の経験談として、21世紀に入ったあたりから、都会のコンビニで外国人を見ることは珍しくなくなりました。10年前は、発音が日本人らしくないので、名札を見てみると、中国人や韓国人だと分かりました。ここ数年間は、日本語の発音を聞くまでもなく、見た目で中国や韓国以外のアジア系だと分かるコンビニ店員が増えました。そのアジア系コンビニ店員の半数以上は「実習生」か「留学生」だったと、上記の本によって知りました。

「実習生といえば、日本に技術を学びに来ている外国人のようだが、実態は短期の出稼ぎ労働者だ」とこの本では断定しています。留学生の中にも、勉強よりも出稼ぎを目的とする者が多く含まれているそうです。残念ながら、実習生や留学生が「出稼ぎ目的」と正直に白状するはずがないので、上記の本にその証拠となる統計は示していません。なんでもそうですが、「統計なし」とは実態不明ということです。実態が分からなければ正しい対策の立てようがありませんし、対策が成功したにしろ失敗したにしろ、その原因を検証することもできません。私の経験からいえば、質の高い統計の多さは、その国の経済力の尺度になります。日本と比べると、西洋の国は社会全体を把握するための正確な数値統計の多くを公開しており、発展途上国は統計があまりとられていない上、不正確です。統計の質が経済力を決める傾向は国だけでなく、企業でもあてはまるかもしれません。

話を移民政策に戻します。それにしても、なぜ出稼ぎ労働者が留学生として日本に来るのでしょうか。その大きな理由が「留学生30万人計画」にあります。これは1983年に中曽根内閣が、「留学生10万人計画」を2000年までに達成する、としたことから始まっています。なぜ10万という数字を弾き出したかといえば、同じ非英語圏の先進国のフランスに留学生が12万人いたからに過ぎません。日本のバブル経済に乗って、留学生は1983年の1万人から1993年の5万人程度に伸びましたが、そこからは伸び悩み、2000年で6万4000人と未達になりました。本来ならそこで「なぜ留学生は計画通りに増えなかったのか」「そもそも留学生を増加させるべきだったのか」などを考察すべきなのに、なぜか政府は大した意味のない「10万人」にこだわり、留学ビザの発給基準を緩める禁じ手を使います。結果、2003年に「留学生10万人計画」は達成されます。達成意義がないことは言うまでもありません。

しかし、性懲りもなくその5年後の2008年には、福田内閣が「留学生30万人計画」を2020年までに達成すると打ち上げます。やはり根拠となったのはフランスで、高等教育機関の学生の12%が留学生なので、日本の高等教育機関(大学、大学院、短大、専門学校)に通う約300万人のうち10%を留学生にしようと考えたわけです。上記の本にはこの数値を「思いつきに過ぎない」と切り捨てています。

世界で留学生の多い国に並べると、アメリカの78万人、イギリスの42万人、オーストラリアの25万人、フランスの24万人です。上位3ヶ国は英語圏で、3位のオーストラリアでさえ30万人には届きません。人口規模と経済規模の違いを考慮しても、日本での30万人留学生は非現実的です。それを実現させようとするから、出稼ぎ目的のいびつな留学生が日本に来てしまっています。

留学生でさえ出稼ぎ目的なのですから、外国人実習生なんてもっと出稼ぎ目的のようです。日本が実習生を受け入れている理由として「国際貢献」や「技能移転」を公式に掲げていますが、それらはただの建前で、本音は人手不足の解消にあった、と上記の本は断定しています。ただし、なぜ「国際貢献」といった建前が必要だったのかは明確に書かれていません。

もちろん、留学生制度であれ実習生制度であれ、理想通りに運営されていれば、なんの問題もありません。しかし、どちらも「日本が天国」と思って来たアジア人を「反日」にさせて帰国させている現実があります。それについて、次からの記事で掘り下げます。