未来社会の道しるべ

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ピーターの法則を回避するために

1、ある人材が昇進できるかどうかは、現在の仕事の遂行能力に基づいて判断される。

2、ある人材は昇進後の地位での仕事の遂行能力が高いとは限らない。

3、以上から、ある人材がその組織内で昇進できる限界地位に達した時、ある人材が昇進前までに経験した全ての地位での仕事の遂行能力が高かったのに、限界点に達した地位での仕事の遂行能力が低いことになる。

4、これから、ある組織内の各地位の仕事は全て、その仕事の遂行能力の低い者たちによって処理されていることになる。

以上がピーターの法則です。もちろん、こんな単純な法則に従うほど、世の中の仕事は単純ではありません。しかし、仕事遂行能力によらず、勤続年数によって自動的に昇進が約束されている多くの日本の民間企業、公的機関では、ピーターの法則の危険性は注目に値するのではないでしょうか。

なお、ピーターの法則を回避する方法としては、次の二つがあります。

1、現在の仕事遂行能力が高い者は昇進させず、代わりに昇給させる。

2、昇進後の地位の試験訓練期間を設けて、仕事遂行能力があると認められた者だけ昇進させる。

これまでの日本の新卒一括採用制度と年功序列賃金制度の元では、一般的に新入社員は全員、各部署の最も低い地位からスタートしました。私が提案する新しい人事制度では、新入社員でも管理職から始められます。より具体的には次のような人事制度を提案します。

1、全ての地位は試験訓練期間を経験した者から選抜して採用される。

2、試験訓練期間への応募は、年齢や職種経験の有無によらず可能とする。

3、定員よりも応募者が多い場合、特別な事情がない限り、全ての応募者を試験訓練期間に登用する

単純に言えば、多くの経験者と未経験者を試験訓練期間で登用して、仕事遂行能力の高い少数を採用する制度です。

もちろん、この通りにできない地位もあるでしょうし、この通りにすれば大きな問題が出てくる地位もあるでしょう。ただし、固定観念を払拭して、十分に工夫すれば、ほとんどの職種の地位は、上の3原則通りに試験訓練期間を設けて、採用に至ることは可能だと思います。

たとえば、全ての応募者を試験訓練期間に登用したら、会社内に試験訓練期間の社員が入りきらなくなってしまう、という企業もあるでしょう。その場合、試験訓練期間中は午前勤務のみ試用社員と午後勤務のみ試用社員で分ける、曜日で出勤日を分ける、などの工夫をすれば、最低でも2倍の定員は試験訓練期間として受け入れられるはずです。

また、この通りにすれば、人気企業の人気地位には、応募者が殺到する一方で、人気のない企業の人気のない地位では、応募すれば、能力がなくても試験訓練期間を突破して、採用されることになるでしょう。そのため、能力のある人でも試験訓練期間が連続することで、人材の無駄が増えるでしょうし、特定の職種の人手不足がさらに悪化するかもしれません。ただし一方で、人材の流動性は間違いなく増えますし、こちらのブログで批判している不公平で非効率な年功序列の秩序は崩壊していくでしょう。

少なくとも、「全ての地位は下から上がってきた者だけに開かれる」習慣がなんの検証もなく浸透しすぎている日本に、上の3原則を上手く取り入れさせれば、経済効率は格段に上がると確信します。