未来社会の道しるべ

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アメリカの医療は先進国最悪である

国全体での医療費高騰の一番の原因を次の中から選べ。

1、国民所得の上昇

2、医療技術の進歩

3、高齢

4、医療保険の普及

5、病気の蔓延

日本の医学部には準国家試験に等しいCBTという全国統一試験があります。現在それに合格しないと、5年生以降の病院実習ができません。そのCBTの試験に、上の問題が出題されて、答えは2の医療技術の進歩でした。その根拠となっているのは、これらの論文(http://content.healthaffairs.org/content/28/5/1276.abstracthttp://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1200478#t=article)らしいです。ただし、どちらもアメリカの研究です。私が使った問題集では、3の高齢化が△になっていました。ともかく、少なくともアメリカでは、医療技術の進歩が医療費の高騰に最も寄与しているようです。

そのアメリカの医療費は次のグラフにあるように2位を突き放しての世界最高です。

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これはアメリカ人が豊かだから、他のものにも金を使って、医療費にも使っているのではありません。GDP比でみても、アメリカは2位集団から頭抜けて世界最高です。

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では、これだけアメリカ人が医療に金を費やして、医療研究に金をつぎ込んで、病気を克服できているかというと、そんなことはありません。WHOの2015年発表で、平均寿命順位は日本が1位なのに対し、アメリカが31位です。

オバマケアで国民皆保険が名目上達成されましたが、医療費が全体として安くなってはいません。だから、これまで保険外だった人が保険内に入ったことで、もともと保険内にいた人がその割を食って、保険適用疾患が制限されたりしています。

どこの国でもそうですが、莫大な医療研究費は、最終的に患者が負担することになります。本気で医療費を抑制したいのなら、医療研究を止める覚悟も必要なのかもしれません。どんなに医学が進歩しても、人は必ず老化して、衰え、死にます。「医学の進歩=善」とは限りません。少なくとも、他の研究同様、費用対効果は考察されるべきです。

あらゆる分野で、日本はアメリカを基準にする傾向があります。医療についてまで「日本の医療はアメリカより10年遅れている」と言われることがあります。確かに医学をはじめ、多くの学問分野では、アメリカが最先端です。しかし、医学の進歩はアメリカ人全員の健康促進に必ずしも貢献していません。高額すぎる医療費を払えないため、先端医療どころか、日本並みの医療ですら受けられない人がアメリカ全体で何割もいるのです。ノーベル平和賞受賞者の大統領が(日本では50年以上前に実現している)国民皆保険を実施しようとしても、上記のように竜頭蛇尾で終わっています(ただし、長期間国民皆保険をアメリカで改善し続けたら、好ましい制度になっていく可能性は高いと思います)。

ほとんどの日本人は、ほとんどのアメリカ人よりも多くの病気について適切な治療を受けられ、ほとんどアメリカ人が支払うよりも安い医療費で済みます。私に言わせば、アメリカの医療は日本より10年、あるいは50年遅れています。