未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

バブル期日本の長所

国家の富は国民の道徳と教養によって決まる」との考えを持っているため、そう思ってしまう側面はあるでしょうが、世界で日本の存在感が最も大きかったバブル期(世界のGDPに対する日本のGDP比が最も高かった時代と一致しますが)、日本は相対的に他の先進国より優れていた面は大きかったと考えています。

その頃、日本は世界で唯一成功した共産主義国と言われていました。その理由として、日本の貧富の格差が他国よりも極めて小さかったことがあります。

日本のバブル期の映画に「ウォール街」がありますが、その作品でアカデミー賞を受賞したマイケル・ダグラスは「アメリカでは上位1%がこの国の富の50%を所有する。その3分の2は相続によるもの。金目的で結婚した売女やバカ息子どもがその金で悠々と暮らしている。アメリカ国民の半分はほとんど持っていないか、なにも持っていないかのどちらかだ」というセリフを吐きます。このブラックジョークは明らかに誇張されていますが、アメリカの欠点を赤裸々に表していると思います。

社会道徳的な観点からすれば、同じ人間なのに、ある人が他の人より100倍以上も価値があるなんてことはありえません。たとえば、エジソンがいなかったとしても、100%間違いなく、他の誰かが電球や蓄音機を発明しました。ビル・ゲイツがいなかったとしても、他の誰かがパソコンを絶対に普及させています。両者とも、たまたま先導者になれた幸運に恵まれただけです。最下層の国民の100倍以上の収入を与える必要はないですし、そうすべきでもありません。

しかし、資本主義社会でなんの規制もないと、そんな「すべきでないこと」が実現してしまいます。その資本主義最大の矛盾を解消するために、共産主義が生まれたのでしょうが、結果として全て失敗しました。他の多くの資本主義諸国もこの矛盾を解決できていません。アメリカはもちろんヨーロッパでも、世界的大企業の社長になると何十億以上もの年収を得ていたりします。

一方、日本だとトヨタ自動車の社長でさえ現在年収3億円5千万程度のようです。バブル期だと、もっと低かったでしょう。資本主義国の宿命のような貧富の格差を日本だけは克服できていたようです。さらに、どんな仕事でも収入が同じという理不尽なことにもならず、仕事ごとに適切な報酬は支払われます。「極端に貧しい者もいないし、極端に豊かな者もいない。皆が能力に応じて働き、仕事の業績は適切に評価される」という理想郷にバブル期の日本は世界中のどの国よりも近づいていたのです。これを日本はもっと誇っていいはずです。

周知のように、土地バブルの発生や無駄な財政投資や無意味な年功序列など、バブル期の日本に大きな社会的欠陥があったのも事実です。だからといって、バブル期の日本でほぼ実現できていた「極端に貧しい者もいないし、極端に豊かな者もいない」社会まで放棄しなくても、現状の停滞期から脱する方法はあると考えています。むしろ、他の資本主義国が実現できなかった「貧富の理不尽な格差が少ない」社会を手放したら、皆が幸せになれる理想郷から遠ざかると確信します。