未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

政治

学位論文のための難民調査

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 著者はオックスフォード大学の博士課程の研究のため、ガーナのブジュブラムに来ていました。そのオックスフォード大学の大先輩にデビッド・タート…

恵まれた難民たち

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 難民「なあ、俺って、リベリアに帰った方がいいのかな?」 著者「帰りたいのか?」 難民「いや、そうじゃないけど……。でも、UNHCRやガーナ政府は…

難民キャンプの政治

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民たちは政治に参加してもいいのだろうか? もちろんだ。難民の政治的権利は難民条約および各種人権条約に規定されている」 そう本にはありま…

先進国移住の可能性は難民にとっての麻薬

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民キャンプの経済事情」で、難民キャンプ内の多くの職業を書きましたが、これほど多種多様な職業が難民キャンプで存在している例は少数です。…

難民キャンプ内の助け合い

前回の記事の続きです。 「外圧にさらされる集団は、内部での結束力が高まるのが常だ」 「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)からの引用です。 難民キャンプが長期化すると、難民たちは受入国から帰国するように促されます。どの難…

難民キャンプの経済事情

「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)は素晴らしい本でした。難民キャンプの経済事情について調査した本です。 「左翼のキレイ事に吐気を催す保守派たちへの共感」の記事で書いた生半可な海外ボランティアを経験した一人と、私との…

「大地震連鎖と富士山大噴火」と「国債デフォルト」よりも被害が明らかに大きくなる日本のリスク

前回の記事の続きです。 「大地震の連鎖と富士山大噴火」と「国債デフォルト」の被害規模の比較は難しいですが、それ以上に悲惨な状況になる危機を今現在の日本が抱えていることを知っているでしょうか。この問いに日本人の多くが即答できないのなら、それは…

なぜ今日起きてもおかしくない国債デフォルトが起きた時の準備をしないのか

2023年12月15日の朝日新聞の記事の抜粋です。 「国会が開いているにもかかわらず、国会審議がいらない予備費で経費をまかなう事例が相次いでいる。政府が2020~21年度に使い道を決めたコロナ予備費約14兆円のうち4割超が国会開会中の決定だった。政府は緊急…

日本で大地震が起こった時に最も心配すべきこと

正月の能登半島地震の報道で、ある弁護士が震災被害の証拠を示すための写真や動画を撮るべきことを言った後、最も被災者に伝えたい内容として、こう述べました。 「地震に対する経済的支援は十二分に出ます。日本には災害を救済するための支援制度が数えきれ…

全共闘運動が日本会議を生んだ

前回の記事の続きです。 全共闘運動が最も影響を与えたのは、なんと左翼ではなく、右翼との解釈があります。左翼は民衆運動が活発で、右翼は暴力団体運動が活発なのは、西洋でも東洋でも日本でも同じです。しかし、現在、右翼でも日本会議や在特会などの、民…

空想内全共闘の終わり

前回の記事の続きです。 私が大学時代、新左翼運動に参加しなかった最大の理由は、インターネットの炎上です。大学時代に、新左翼についてのHPを立ち上げ、ネット上で議論したら、ものの見事に炎上したのです(当時は炎上という言葉もなかったですが)。議論…

全共闘とはなんだったのか

前回の記事の続きです。 私の出身大学でも、1990年代後半に、わずかですが、新左翼グループが残っていました。全共闘運動に尋常でない興味を持っていた私は、当然、その新左翼グループに加わることも考えましたが、躊躇していました。 最大の理由はインター…

全共闘の思想的敗北

前回の記事の続きです。 全共闘は思想的にも負けていたと私は考えています。当時の大学や自民党に問題が多くあったのは事実です。だから、大学当局や政治に反抗するのは確実に正当性があります。しかし、それにしても「この要求は横暴だ」「その理屈は飛躍し…

全共闘はなぜ失敗したのか

前回の記事の続きです。 日大紛争の1968年9月30日は一つの到達点ではありますが、その1ヶ月前くらいから全共闘側の道徳違反が目立ち始めています。私が大学生だった2000年頃に文献だけを頼りにしても、特に全共闘側が我田引水なので、本質がつかみづらかった…

全共闘の熱狂

「日本で理性的な反抗があった」 「不良どもによる道徳にもとる反抗ではない」 「学力の高い一流大学の学生たちが民衆運動として反抗していた時代があった」 私の大学時代の勉強の半分は、全共闘の自己研究に費やされたと言っても過言でないでしょう。とりわ…

全共闘という日本の黄金時代

「日本人がデモするなど想像できない」 日本に何年も住んでいる外国人から、こう言われたことが私は一度ならず、あります。日本人は体制に従順で、周りと同じように行動し、ルールはどんな理由があっても守らなければならず、年上や先生や上司への発言は、そ…

国スポ(国体)を東京に固定する提案

前回の記事の続きです。 オリンピックを東京に固定する提案は、国民スポーツ大会(旧称:国民体育大会)を東京に固定する提案を元にしている気がします。国スポ東京固定案は、20年ほど前から、私も何度も聞いています。 国スポを東京に固定すべき最大の理由…

オリンピックを東京に固定する提案

今朝の朝日新聞に「オリンピック開催地を毎回東京にすればいい」との意見が載っていて、「よくぞ言ってくれた」と感心しました。朝日新聞らしくない斬新なアイデアですが、元読売新聞記者で作家の堂場瞬一の意見でした。 この案の最大のメリットは開催費用の…

運命の五分間はなかった

太平洋戦争は、その名の通り太平洋が主戦場です。海軍が主役となる戦争であり、その海軍の主役は空母(飛行機を発着させる船)、つまり飛行機になりました。これを戦前から最も正しく予想していたのは、敗れた日本の山本五十六連合艦隊司令長官であり、その…

コロナ自粛は先進国の高齢者の残り数年の命を延ばし、発展途上国弱者の命より価値ある尊厳を踏みにじった

コロナ禍により開業医の収入は激減しました。初期に「あのクリニックでコロナが出た」などの風評被害があったり、新型コロナを警戒して患者が受診を控えたりしたからです。病院も収入が減りましたが、補助金が出ましたし、そもそも勤務医の給与は患者の多寡…

なぜ日本だけ窓際職員が多いのか

前回の記事に書いたように、経済対策の補助金は、「基金」として支出され、独立行政法人や一般社団法人にピンハネされた後、民間の大企業でピンハネされ、分配される制度が確立しているようです。 その二段階ピンハネ事業のうち15%の29基金では、実質的に20…

密室政治・稟議制批判

私が高校生の時、天文部の予算会議に出席することがありました。出席者は天文部の部長の私と副部長、生徒会役員の2人の計4人です。天文部の年間予算額は既に書かれており、その根拠を私が聞くと、生徒会役員はあいまいな説明をしました。しばらく話してみて…

地方議会は失くしていい

前回の記事と同じく、「地方議員は必要か」(NHKスペシャル取材著、文春新書)を読んでの考察です。 地方議員のなり手不足は、昨今、新聞でもよく目にします。無選挙当選は3割の自治体でありますし、定数割れの自治体すらあります。公職選挙法で定員の6分の5…

日本は政治家より官僚が強い

タイトルは、このブログを読む人なら常識でしょう。たとえば、第二次安倍政権時の議員提出と内閣提出の法案の差です。 議員提案だとほとんど否決されていますが、内閣(実質は官僚)提案だとほとんど成立しています。もちろん、成立した法律数でも官僚が政治…

こんな社説が大新聞に載っているから日本のIT化は進まない

5月25日の朝日新聞社説からの引用です。 「マイナカード 拙速な活用拡大反省を」という見出しで、「拡大一辺倒の姿勢を改め、安心して使える環境を整えることに注力しなければならない」という結論で終わっています。マイナンバーカードにより複数の経路で情…

日本の少子化対策はなぜ失敗したのか

「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)は素晴らしい本です。この本を読めば、他の少子化の本は読まなくていい、むしろ読まない方がいい、と言えるほど本質を突いています。日本の少子化対策として、保育所の確保だとか、女性…

一人一票の多数決が間違いを導く代表例がインドにあった

「コルニーロフの反乱がなかったら、現在の世界はどうなっていたのでしょうか?」 「21世紀に世界の中心に出現した国はなぜ共産主義なのか」に書いたように、「(くだらない)コルニーロフの反乱がなければボルシェビキ革命(10月革命)は存在しなかった」と…

「資本主義と共産主義」あるいは「民主主義と共産主義」が対立しない実例は70年以上前からインドにあった

私が生まれる前の話になりますが、「民主主義=資本主義」という考え方が、戦後から1970年代くらいの日本人には強くあったようです。昔の本を読むと、「共産主義VS民主主義」という言葉、あるいは考え方が、特に反共産主義派(資本主義擁護派)から頻出しま…

なぜミャンマーで2021年の軍事クーデターが起きて、今後ミャンマーはどうなるのか

21世紀初頭、ミャンマーは20年間も憲法を無視した軍事独裁政権が続いていました。しかし、2008年に憲法ができ、2011年に軍最高司令官とは別の大統領が憲法にのっとって就任し、2016年に民主選挙による政権移譲が行われました。ミャンマーの民主化は着実に進…

2010年代のミャンマーの民主政治期

2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きます。事実上の最高指導者であるアウンサンスーチーが拘束され、「ミャンマー現代史」(中西嘉宏著、岩波新書)によると、「2011年以来続いていた民主政治」が終わりました。 ミャンマーは軍事独裁政権が長く…